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サプライチェーンをテクノロジーが変革する5つの方法


5 Ways Digital Tech

新型コロナウイルスの発生以前から、ライフサイエンス業界ではデジタルトランスフォメーションの変革に対する取り組みが行われてきました。しかし、2020年の世界的な感染拡大による不安定さの露見が、サプライチェーンに対する電子化の重要性を再認識させました。マッキンゼー社が実施した調査によれば、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけとして、多くの企業では電子化の実行スピードが20-25倍も上がってきています。

このように、ライフサイエンス企業にとって、サプライチェーンにテクノロジーを取り入れることは、非常に大きな意味を持っています。

サプライチェーンにデジタルツールを導入することのビジネスに対する影響

デジタルトランスフォメーションの取り組みに前向きな企業にとって、サプライチェーンに対するデジタルツールの導入がもたらすビジネスへの影響は、調査結果でも明確になっています。

前述のマッキンゼー社の調査でも、新型コロナウイルスの危機下において、新しいデジタルのテクノロジーの活用を試みている企業や、他社と比較して電子化により多くの投資を行なっている企業では、そうでない企業の2倍の人数の経営者が、収益が大幅に増加したと報告していると結果が出ています。

さらに、デジタルテクノロジーの領域において成熟している企業は、世界的な大不況において他社を凌駕しただけでなく、今後も同業他社に先駆けて加速していくことが予想されています。

ボストンコンサルティンググループ(BCG)の調査では、80%以上の企業が電子化を加速する予定であると回答しており、この内容には十分な裏付けがあります。

電子化をリードする企業は、電子化に出遅れている企業と比較して1.8倍の収益成長率を達成しており、企業価値全体では2倍の差が出ているからです。短期的には、電子化により生産性が向上し、より優れたカスタマーエクスペリエンスに繋がることができています。そして、中長期的には、電子化は新たな成長機会とビジネスモデルの革新をもたらしており、また、変革を成し遂げた企業は、継続的なイノベーションを習得することで、デジタルトランスフォメーションを繰り返す必要が無くなると同社は述べています。

サプライチェーンにデジタルテクノロジーを統合

電子化が進む経済において、ライフサイエンス企業が優位性を獲得できるテクノロジーが幾つか登場しています。本稿では、この中で5つのテクノロジーのサプライチェーンに対する影響について、ご紹介いたします。

1. 自動化(オートメーション)

エンス企業では、紙運用または部分的に電子システムを利用して、サプライヤーに関するデータの取得や管理を行なっておりますが、定期的にデータが更新できていない状態が発生しています。電子化したサプライチェーンやサプライヤー管理の自動化を活用することで、リアルタイムで自動的に情報の収集や処理が可能となる為、手作業によるデータの収集や入力、更新のように時間や労力のかかる作業を削減することができます。

2. IoT(Internet of Things)

ネットワークを介して、物理的なデバイスやシステムがデータをやり取りするIoTは、特に膨大なデータソースからデータを収集し、パフォーマンスのリアルタイム測定を通じてサプライチェーンの運用を最適化できる可能性を秘めています。IoTデバイスは、製造プロセス全体のオペレーションをリアルタイムに可視化することが可能であり、企業はサプライチェーンに繋がる様々な品目にIoTセンサーを組み込むことで、これまでにはない可視性とトレーサビリティを確立することができます。

3. 高度な分析

IoTの活用によりデータは増加する一方、そのデータの構造や規則、完全性に課題を抱えているケースが増加しています。収集したサプライチェーンに関する膨大なデータは、企業が迅速かつスマートに利用することが出来なければ、ほとんど役に立つことはありません。その点、サプライチェーンのデータを活用する上では高度な分析(能力)が重要な役割を担っており、プロセスや人、製品に対する深い洞察を提供することができます。そして、サプライチェーンにおけるリーダーは、ビジネスや業務の改善に繋がる、より良い意思決定を行うことが可能になります。

4. AI(人工知能)

AIと機械学習は、より多くのデータを時間をかけて処理する為、サプライチェーンを変革できる大きな可能性を秘めています。この技術の誕生により、様々な分野からデータを収集し、自己改善型の分析に繋げることが可能となりました。さらに、サプライチェーン全体に対して、パターンの把握や未来シナリオの予測、データエラーの特定や修正、表面化したリスクやIoTに対する洞察の高度化、資材計画、発注計画、ロジスティックスなど、様々な分野の改善に活用することができます。

5. ブロックチェーン

ブロックチェーンとは、デジタルで分散化されたユニークな(データの)台帳のような物ですが、扱い方次第では問題を引き起こしかねません。ブロックチェーンに情報が入力されると、分散型台帳はロックされ改ざん出来ないようになります。スマート・コントラクトやトレーサビリティー、認証、他の分散化されたサプライチェーンに関する管理機能は、ブロックチェーンが活用可能となる重要な機能の候補と位置付けられている一方、このような機能の多くは、現状ではパイロット段階に留まっています。

サプライチェーンにおけるデジタルトランスフォメーションは、サプライチェーンのあらゆる要素を完全に把握し、企業のプランニングや意思決定、問題対応の改善等を支援することが見込まれています。データの電子化や、IoTによる企業の全てのデータの連携、AIのアルゴリズムを通じた分析により、データは可視化され、利用可能な形式で、より価値のあるものへと変貌を遂げます。

デジタルの進むべき道

サプライチェーンにデジタルテクノロジーを採用する上で、適切なツールを適切な方法で導入することにより、大きなチャンスをもたらすことができます。しかし、大規模な変革は困難な為、企業がサプライチェーンに対するデジタルツールのビジネスインパクトを向上する方法を検討する際には、「小さな自動化」のアプローチで電子化の取り組みを開始しましょう。そうすることで、柔軟で適応性の高いテクノロジーをスピーディーに導入することに繋がり、既存の基幹システムに存在するギャップを埋めることが可能となるのです。


参照
  1. "A Pandemic Digital Silver Lining: Companies Digitized Many Activities 20 to 25 Times Faster During COVID-19," McKinsey & Company, October 2020.
  2. "The Evolving State of Digital Transformation," Boston Consulting Group, September 2020.
  3. "Flipping the Odds of Digital Transformation Success," Boston Consulting Group, October 2020

david_butcher

ニューヨーク州立大学パーチェス校にてジャーナリズムの学士号を取得後、Technology Marketing社及びThomas Publishing社にて編集者として従事、現在はマスターコントロールのMarketing Communication Specialistを担当しています。


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